2015年3月13日、大手化粧品メーカー資生堂はフランスの「セルジュ・ルタンス」の商標権を買い取り、権利取得すると発表した。
(参照:商標権の保有者を複数名の連名で登録することはできますか?

今後は資生堂が資本投入をし、世界主要都市への旗艦店となるブティックを出店するなど欧州以外への進出をはかる。商標権を売り渡す側のフランス人クリエイター、セルジュ・ルタンス氏は、今後もクリエイティブ・ダイレクターとしてブランド育成に貢献していく予定だ。

資生堂は1992年に「レ・サロン・ドゥ・パレ・ロワイヤル・シセイドー」(後にレ・サロン・ドゥ・パレ・ロワイヤル・セルジュ・ルタンスに改名)と銘打ったブティックをパリにオープン、販路を広げており、現在では35カ国に約2,000店を展開している。

セルジュ・ルタンス氏は1968年から著名なブランド「クリスチャン・ディオール」のアートディレクターとして活躍し、1980年からは資生堂のグローバルイメージを担当してきた。1992年からは資生堂の欧州ブティックにて「セルジュ・ルタンス」ブランドのフレグランスを販売、資生堂の欧州進出に貢献してきた。

商標権を確保すれば、その商標に対して安心して投資ができるようになります。商標権を確保しておかないと、そのブランドに投資をして育てても、ブランドが育ったころに第三者が模倣を開始したり、商標権の侵害で訴えられたりして、トラブルが予想されるのであれば、そのブランドに対して安心して投資をすることができません。

今回、資生堂が「セルジュ・ルタンス」の商標権の買収を決めてから、「セルジュ・ルタンス」のブランドを使用して欧州以外の世界主要部への進出を発表したことは、理にかなっているといえます。

商標権の譲渡人であるセルジュ・ルタンス氏は、すでに資生堂とともに活動をしておりますが、正式に資生堂の世界展開の旗印として「セルジュ・ルタンス」のブランドを使用するには、資生堂が商標権を持つべきとの判断があったものと考えれます。

もし、資生堂が「セルジュ・ルタンス」の商標権を確保しないまま世界進出をした場合、後に、資生堂とセルジュ・ルタンス側の関係が悪化した場合には、セルジュ・ルタンス氏が資生堂を商標権侵害で訴えることも考えられます。その際の賠償金額は、おそらく途方もない金額になると考えられます。

共同経営者が商標権の問題をあいまいにしたまま事業展開をし、その後共同経営者同士の関係が悪化してお互いがお互いを商標権の侵害で訴えることはよくあることです。ですから、今回、資生堂が行なった、世界進出の前に、商標権を確保しておくという行動は、将来におけるトラブルを回避するための賢明な選択であったといえましょう。