2014年1月13日、広島県福山市内の居酒屋が商標法違反の容疑で家宅捜索された。
(参照:レストラン、カフェ、ラーメン店などの飲食店の店舗名は商標登録した方がいいでしょうか?

家宅捜索されたのは居酒屋「笑・笑(わらわら)」で、大手居酒屋チェーン「笑 笑(わらわら)」とそっくりの看板を掲げて営業し、商標権を侵害した疑いだ。この居酒屋「笑・笑」は大手チェーン「笑笑」の約600メートルの距離で営業し、オレンジ色の背景に白字で「笑・笑」「わらわら」の表示をした看板を掲げて営業していた。

一方、大手チェーン「笑笑」は赤色の背景に白字で「笑笑」「わらわら」の表示をした看板となっており酷似が指摘されていた。経営者によるとこの店舗を開店させた2,000年当時は福山に大手チェーン「笑笑」はなく、問題がないとの認識だったという。指摘を受けた居酒屋「笑・笑」は14日には看板を撤去し、店名を変えての営業再開となった。

大手チェーン「笑笑」は東京に本拠地を置くモンテローザが運営する居酒屋チェーンで、1998年から「笑笑」「わらわら」を商標登録しているという。昨年中には今回の情報を得て、2014年11月に刑事告発していた。

日本の商標制度は、先願主義が採用されています。先願主義とは、商標を先に使用した者ではなく、先に登録した者に商標権が発生するという考え方です。先願主義に対立する概念に使用主義があります。使用主義とは、商標を先に使用した者に商標権が発生し、登録が早いか遅いかは商標権の発生には影響を与えないという考え方です。

先に商標登録をしたのはモンテローザが経営する居酒屋「笑笑」であり、商標権はモンテローザの方に発生します。しかも、商標権の効力は全国に及びますから、福山市周辺で一番最初に「笑笑」を使用したとしても、福山市の居酒屋は他人の商標権の侵害をしていることになります。

今回の事例は、商標を使用する際には他人の先願の同一又は類似の商標がないかどうか十分に調べる必要があることや、商標を使用し始めたら商標登録をして商標権を獲得しておくことが必要であることを示しております。