2017年6月、特許庁は京都の伝統和紙である「黒谷和紙」を地域団体商標として登録認可した。伝統あるブランドを守り、販路を拡大していくことに期待が寄せられている。
(参照:福島県南会津産の紫色のアスパラガス「会津田島アスパラ」が地域団体商標に

商標権者は黒谷和紙協同組合である。2015年に地域団体商標に出願していた。「黒谷和紙」は800年の歴史を持つ伝統的な和紙である。平家の落ち武者が綾部市黒谷町付近で生活の糧として営み始めたと言われている。

当初は障子紙や提灯紙などの生活必需品に使用する紙を製造していたが、次第に京呉服関連の紙を請け負うようになった。明治以降は養蚕業の発展に伴って蚕袋や産業用紙を製造し、近年ははがきや便箋、美術紙や工芸紙を作るようになったのである。

受け継いだ伝統の業は、黒谷和紙会館や、旧口上林小内にある第二工房の黒谷和紙工芸の里で見学したり、紙漉き体験をすることができる。現在は黒谷町以外の出身者が組合員となったり、黒谷町以外の地域で製造されることも増えており、ブランドルールの確立が求められている。

地域団体商標登録をすることで、「黒谷和紙」の製造・販売を行うことができる者は、一定の生産者に限定されることになり、また、その限定された生産者間で、商品の品質の基準化やその維持向上が図られますから、ブランドルールが確立されます。

ブランドルールが確立すると、そのブランド名で品質の安定した商品が販売されるようになりますから、消費者の信頼を勝ち取り、それが売り上げの向上につながってゆきます。

今回、地域団体商標登録された「黒谷和紙」は、黒谷町出身でない生産者が生産したり、黒谷町以外の地域で生産が行われるケースが増えているとのことですが、これを放置しておくと、800年以上継続した「黒谷和紙」のブランドが崩れていくことになるでしょう。

そのような状況下、黒谷和紙協同組合が「黒谷和紙」の地域団体商標登録を行い、ブランドルールの確立が図られることは、非常に好ましいことだと言えます。