「あずきバー」が井村屋の商標として認められた判決について思うこと

「あずきバー」が井村屋の商標として知財高裁で認められましたね。正式には拒絶審決が取り消されました。(参照:北海道 北見ニクマチの肉巻き 「肉もち」を商標登録!)
 
拒絶理由は、3条1項3号と、4条1項16号です。弁理士の受験生にとってはしょっちゅう試験に出てくる馴染みの深い拒絶理由ですね。

3条1項3号は、自他商品・役務識別力がないという拒絶理由通知です。つまり、使用しても何処の会社の商品か分からず、また、誰もが使用したいと考える商標なので誰かに独占させると産業の発達を阻害する(公益上適当でない)ことになるので拒絶理由となっています。

「あずきバー」は、商品の材料である「あずき」と、品質である「バー」を普通に使用しているだけの商標ですから、記述的商標に該当すると思います(商標法3条1項3号)。

よって、審査官の判断は正しいと思います。審判官についても同様です。審査官も審判官もあくまで商標法に則っての判断しかできないので、この判断を責めるのは間違っていると思います。現に、裁判でも3条1項3号に該当すると判断されています。
 
4条1項16号は、品質誤認を生じる可能性がある商標は登録を認められない旨の規定です。

つまり、「あずきバー」をあずきを使用していないアイスや、アイス以外のお菓子に使用すると、需要者(消費者)が間違って購入してしまうおそれがあるので拒絶理由となりました。

一般的には、「あずきを原材料とする棒状のアイス菓子」などに指定商品を変えればこの拒絶理由は解消できるのですが、今回はそのような補正をしていません。

私も、ぱっと見では審査官や審判官の意見に賛成できますが、裁判では品質誤認を生じないという判決になりました。

判例を引用すると「しかしながら,ある商標が品質について誤認を生じさせるおそれがあるか否かは,当該商標の構成自体によって判断すべきところ,本願商標は,それ自体から『あずきを原材料とするアイス菓子』を直ちに認識させるものではないから,被告の上記主張は,失当である。」ということです。
 
さて、ここからが本題です。3条1項3号の拒絶理由を覆す方法として、商標法3条2項の適用を受けられる旨の主張ができます。

商標法3条2項は、出願人の商品を表す商標として需要者の間で全国的に広く認識されていれば、例え3条1項3号に該当しても自他商品識別力があると認められる旨の規定です。

これに関しては、私も正直井村屋のあずきバーですから、明らかに全国的な知名度があるだろうと感じます。

しかし、審査官、審判官は認めませんでした。裁判では、見事にこの商標法3条2項に該当するという判決になりました。
 
判例を引用すると「本件商品は,『あずきを加味してなる菓子』に包含される商品であるところ,遅くとも本件審決の時点において,我が国の菓子の取引者,需要者の間で原告の製造・販売に係る商品として高い知名度を獲得しているものと認められ,これに伴い,本件商品の商品名を標準文字で表す『あずきバー』との商標(本願商標)は,『あずきを加味してなる菓子』(指定商品)に使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認められる。」とのことです。
 
当然だと誰もが思うでしょうが、審査官、審判官としては判断が難しいと思います。なぜならば、「あずきバー」が含まれる商品は他にも販売されているので商標法の規定を文言通り解釈すれば、3条2項は認められないと判断せざるを得ないのではないでしょうか。

これが、審査官や審判官のつらいところだと思います。彼らは、立法ではなく行政ですので、法律に従うしかないのです。一方裁判官は立法ですので、法解釈を変えることができます。だからこそ今回の判決となりました。
 
さて、今回の判決を見て思うことは、継続は力なりです。一つの商標を長年使用し続け、商標に化体した信用を守り続けた結果今回の判決となりました。

沢山の商品がある会社にとっては、一つ一つの商標にどれだけ愛着があるか分かりませんが、井村屋のようなブランド戦略は、古風ですが素晴らしいと思います。頑固一徹というか、逆に新しさを感じます。

このようなブランド戦略を目指していく企業が増えると、時代の流れに乗ったブランド戦略と、日本の古き良きブランド戦略とが入り交じった新しい商標の時代が来るのではと期待してしまいます。
 
追伸:裁判では上記法律以外にもう一つ、審判での手続に違法性があるか否かという争点もありましたが、弁護士や弁理士以外は全く興味ないと思うので話題にしませんでした。結果は、違法性なしでしたが。

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