2016年8月18日、兵庫県が開発した青ナシ「なしおとめ」が商標登録された。今後は販路拡大や栽培面積の拡大、ひいては但馬の地域ブランドイメージの向上が期待されている。
(参照:特許庁 地域団体商標の最新データを整理・公表

今回登録された商標の商標権者は、出荷元でもあるJAたじまとなっている。兵庫県但馬地域は二十世紀ナシを中心としたナシの栽培が盛んな地域であり、同地域の香美町香住区は県内産ナシの出荷量一位を誇る産地だ。

兵庫県立農林水産技術総合センター北部農業技術センターは、この二十世紀ナシよりも収穫時期の早い品種の開発に1995年から取り組んできたが、果実が大きく糖度も高い「但馬1号」を選定し、名前を公募していた。1345点あった応募の中から県梨振興協議会とJAたじまが選定したのが「なしおとめ」だった。豊岡市立五荘小学校5年の中村太亮君が命名したネーミングである。

「なしおとめ」は二十世紀梨よりも大きめの1個350~400グラムほどのボリュームの青梨品種となっている。収穫時期が早めの8月中旬から下旬のため、既存品種を越える人気が期待されている。

今回の商標登録は、地域団体商標登録がぴったりのケースですが、地域団体商標登録は、商標名に「香美」や「但馬」といった地域名を含む必要があります。今回商標登録された「なしおとめ」は地域名を含まないため、商標権者であるJA但馬が地域団体商標登録を希望する意思があったかどうかははっきりしませんが、結果的に、一般の商標登録となりました。

地域団体商標登録の場合には、ブランド名に地域名が入りますから(例えば「但馬なしおとめ」など)、兵庫県但馬地域以外で生産された梨に地域団体商標登録「但馬なしおとめ」が使用されることを抑制することは比較的容易です。

しかし、一般の商標登録では、確かに、法律上は、商標権者であるJAたじま以外は「なしおとめ」のブランドを使用できませんが、但馬地域以外の梨の産地で梨の品種である但馬1号が生産された場合、その地域の生産者が「なしおとめ」というネーミングで梨を販売することを抑制することは事実上難しくなります。

その意味では、産地が特定された農産物のブランドは、商標登録よりも、地域団体商標登録で保護したほうがよいと考えられます。いずれにしても、今回の件は、通常の商標登録と地域団体商標登録の違いについて考えさせられる事例でした。