2015年7月30日、東京五輪組織委員会の武藤敏郎事務総長は「問題ない」との見解を公表した。IOC国際オリンピック委員会や組織委員長の森善朗氏も同様の見解を示しているという。
(参照:味の素、海外模倣品対策「商標侵害対策 虎の巻」に英語版を追加

この問題は、東京五輪の公式エンブレムが、ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークと酷似していると指摘があったものだ。ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークは、デザイナーのオリビエ・ドビさんがデザインしたものだ。

一方で東京五輪の公式エンブレムは、アートディレクターの佐野研二郎氏がデサインを手掛けている。ネット上では、この東京五輪の公式エンブレムに関して、さらにスペインのデザイン事務所「ヘイ・スタジオ」の作品にも色合いが似ているとの指摘が上がっている。

東京五輪の公式エンブレムの作成に当たっては発表前に商標調査を行なって問題ないと認識した。ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークは商標登録されておらず、今後の動向が注目されている。

今回の問題は、ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークが、商標登録されていないため、少なくとも商標権に関しては、日本の東京五輪組織委員会などの「問題がない」という主張が、正当なものになっています。

しかし、商標権の問題をクリアしても、今度は著作権の問題があります。著作権の場合には、登録するしないにかかわらず、創作した瞬間に発生します。

また、ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークは、フランスのデザイン会社が作成しましたが、日本とフランスは国際条約を締結しており、フランス人が持つ著作権は、日本でもフランス国内におけるのと同等の保護が与えられます。

著作権の問題になった場合、両者のデザインは確かに酷似していますから、商標の場合に比べて、権利侵害の可能性は高くなります。ただし、元となるデザインに修正を加えただけの場合でも、その修正によって新た創作性が認められる場合には、著作権の侵害には当らないとされています。

東京五輪の公式エンブレムと、リエージュ劇場のロゴマークは、中心的な部分は同じですが、東京五輪のエンブレムは、リエージュ劇場のロゴマークに修正を加えることによって、新たな創作性を有するようになったと考えられます。この点において、東京五輪エンブレムは「問題ない」という結論になったのだと考えられます。