商標権侵害とは何でしょうか。法律的に言うと、正当な権限なき第三者が業として他人の商標権に係る商標と同一又は類似する商標を、当該商標権に係る指定商品又は指定役務と同一又は類似する商品又は役務に使用する行為を言います。(参考:商標法の目的とは?

簡単に言うと、商標登録をしてある他人の商標を勝手に使用する行為を侵害といいます。侵害した場合、差止請求や損害賠償請求をされる可能性があり、刑事罰として懲役や罰金刑になる可能性もあります。商標権侵害をすると、信用ががた落ちになってしまいます。

逆に権利者側から言えば、他人の使用を排除できるので安心して商標を使用することができ、よい商標であれば他人にライセンス契約をくむこともできます。

「商標権侵害なんてしないよ」と思われるかもしれません。しかし、商標法では、過失の推定(第39条)という規定があるため、知らずに商標権侵害をしている方が多いのが実状です。

過失の推定とは、他人の商標権、又は、専用使用権を侵害した者は、その侵害行為に過失があったものと推定すると言う規定です。これも簡単に言うと、知らなかったは通用しないということです。例をあげて説明します。

Aさんは自分で「abcdefg」という商標を考え、この商標を使ってビジネスを開始しました。Aさんの努力が報われて「abcdefg」という商標が少しずつ世の中に広がり、利益が出るようになりました。しかし、あるとき急にBさんから「Aが使用している商標『abcdefg』は、私の商標権を侵害しているから使用するのを辞めないと法的処置を行います。」という警告書が来ました。

Aさんとしては自分が考えた商標ですし、Bさんが使用していることも商標権を持っていることも知らなかったので、侵害しているつもりはなかったでしょう。しかし、過失の推定があるので、Aさんは過失があったものと推定され、裁判で負け、商標を使うことができなくなってしまい、しかも、損害賠償までさせられてしまいました。

商標の怖いところは、例えAさんの方が先に商標を使用していても、Bさんが商標登録出願をする前からAさんの商標として広く知られていない限り、Aさんは侵害者となってしまうところです。特許などでは、Aさんが先に使用していれば先使用権という正当な実施権限があるのですが、商標の場合は、先に使用しているだけでは正当な権利になりません。

今回のコラムで言いたいことは、例えビジネスを開始した時点で商標権が無くても、後から商標権を取得した人間によって使用できなくなってしまう可能性もあるので、必ず商標権を取得すべきと言うことです。決して広い範囲で取得すべきとは思いません。一番大事な部分だけは商標権で抑えておきましょう。そうすれば、安心して商標を使用することができます。