2015年2月25日、知的財産高等裁判所は商標無効を不服とした家電大手メーカー・シャープの訴えを退ける判決を下した。
(参照:シャープ、『IGZO』めぐる商標訴訟で口頭弁論

この判決の結果、シャープは独占使用はできないものの、この名称を引き続き使用することは可能となっている。シャープ側は最高裁への上告も含めて検討していくようだ。

この問題は、シャープが利用許諾を受けて製造した高性能な液晶ディスプレイを2011年11月に『IGZO』として商標登録したところ、特許権を持つ科学技術振興機構が2013年7月に特許庁に対して商標無効を訴え、審判を申し立てたことから始まる。

特許庁は、2014年3月に商標無効という判断を下し、今度はそれに対して無効取消しを求めてシャープ側が知的財産高等裁判所に提訴していた。科学技術振興機構、特許庁、ならびに知的財産高等裁判所は、『IGZO』は原材料の物質名としてエレクトロニクス業界でよく知られた名称であり特定企業の独占使用が適当とはいえないとの見解を示している。

2014年3月の、シャープの商標登録を無効と判断した特許庁の審決の際には、商標法第3条第1項第1号が問題となりました。その商標法第3条第1項第1号では、その商品の原材料を普通に用いられる標章のみからなる商標は登録できないと規定しています。

2014年の特許庁の審決では、インジウム・ガリウム・亜鉛・酸素からなる酸化物半導体に対して、その物質に対する元素記号(In)(Ga)(Zn)(O)を組合わせただけの「IGZO」という標章は、「その商品の原材料を普通に用いられる標章のみからなる商標」に該当すると判断されたため、商標登録はできないという考えが示されました。

今回の知的財産高等裁判所の見解では、商標法第3条第1項第1号というよりも、同法同項第2号が問題となったと考えられます。同項第2号では「その商品又は役務について慣用されている商標」は商標登録はできないと規定されています。

特許庁や裁判所が、「IGZO」は「その商品の原材料を普通に用いられる標章のみからなる商標」や「その商品又は役務について慣用されている商標」と判断しているのですから、「IGZO」の商標登録はできないとする考え方には相当の妥当性を有するものと思われます。しかし、シャープ側がこれに納得せず、最高裁に上告するかどうかが注目されます。