2015年12月14日、特許庁商標課は「日本酒」という文字を商標登録の際の指定商品や指定役務に使用できないと発表した。今後、指定商品や指定役務に「日本酒」の文字が使用されている場合は拒絶の扱いとなる。また、拒絶の扱いを回避する方法も示された。
(参照:特許庁、外国特許情報サービス「FOPISER(フォピサー)」に新たな照会機能を追加

今後は商標申請の際の指定商品や指定役務に、「泡盛、合成清酒、焼酎、白酒、 清酒、直し、みりん」といった具体的なワードを使用することが可能である。

また地理的表示としての日本酒に使用したいケースでは「日本国内産米を原料とし、日本国内で製造された清酒」といった表示が拒絶されないことになる。この変更は、クールジャパン戦略の一環として「日本酒」というワードが国税庁長官により地理的表示として指定されるためだ。

これまで「日本酒」は酒類の一カテゴリーとして普通名詞として使用されてきたが、純日本産の酒を「日本」という地域の生産物として地理的表示を用いたいという戦略的変更が理由となっている。

商標登録の出願を行なう際に必要な指定商品・指定役務の指定の基準となる「類似商品・役務審査基準」は、区分、大分類、中分類、小分類という構成になっています。

例えば、今回の事例であるお酒に関しては、区分が第33類、大分類が「日本酒」、中分類が「泡盛、合成清酒、焼酎、白酒」、小分類が「 清酒、直し、みりん」となります。

今回の特許庁の通知は、商標登録を出願する際の指定商品は、中分類と小分類の中から選択しなければならず、大分類の「日本酒」を指定商品として商標出願を行なった場合には出願を拒否します、ということを意味します。

この通知が出た背景には、「日本酒」というワードが国税庁長官により地理的表示として指定されてことがあります。今回の特許庁の通知がなければ、外国企業が第33類「日本酒」を指定商品として商標登録を行い、登録されたブランドで外国産のお酒を日本国内で販売した場合、商標法上は合法だけれでも、地理的表示制度からすると不当なブランド使用だということになります。

そこで、商標出願の際に「日本酒」を指定商品にすることを不可能にしておけば、こういった問題は回避できます。今回の通知は、商標権制度と地理的表示制度の間の矛盾を見事に調整したものであるということができます。