2015年3月31日、製薬大手の大幸薬品は「正露丸」のコマーシャルメロディを商標出願すると発表した。「正露丸」の商品名文字登録やマーク画像登録に続く商標登録をめざす。
(参照:2014年2月の商標法改正により、「音」「色」なども商標登録が可能に

「正露丸」は、大幸薬品の販売する胃腸薬であり、1946年以来同社の主力商品として広く販売されている。コマーシャルで使用されているラッパの音声のメロディは、1951年のラジオCMで使用されて以来、同商品の宣伝に使用されてきた。

旧日本陸軍の食事を知らせるラッパの音色をモチーフとしている。香港では、すでに2004年に正露丸のラッパのメロディが商標登録されている。

商標法の改正で、これまでの文字や図形、記号だけでなく幅広い分野で登録することが可能となった。2015年4月の法施行から音や動き、色彩、ホログラム、位置などが商標登録の対象となっている。

こうした各種分野での商標登録は米国や欧州ではすでに採用されており、日本もそれに続く形となっている。

平成27年4月1日施行の商標法改正において、音や動き、ホログラム、位置など、従来は、商標することができなかった対象も、商標登録が可能となりました。

大手製薬の大幸薬品が、今回の商標法改正に合わせて「正露丸」ラッパのメロディの商標登録を行なったことは、この改正を理解する事例としては、最適なものであるといえましょう。

正露丸のメロディは、知らない人がいないほど有名なメロディですが、今後は、商標権者以外が、薬品など、商標権者が指定した指定商品等の販売に、このメロディを使用することが禁止されます。

商標法の改正以前は、薬品等の販売に正露丸のメロディを使用しても法的な責任を問われることはありませんでしたが、今後は変わってきます。

例えば、文字(商品名)や図形(マーク)は全く異なるが「正露丸」ラッパのメロディを利用して、胃腸薬を販売する別の製薬会社が出現した場合、今までは、大幸薬品は何もできませんでしたが、今後は、その製薬会社に対して、使用取消をもとめたり損害賠償請求ができるようになりました。

確かに、「正露丸」ラッパのメロディを利用して別の胃腸薬を販売すれば、「正露丸」や「正露丸」の姉妹商品と勘違いして購入する方も大勢でてくると考えられます。そのような会社がでてくれば、大幸薬品は大きな損失を被ります。

しかし、今回の音商標の商標登録により、そのようなリスクは回避できます。そういった意味では、今回の商標法改正は、商標権の侵害の防止のために大きな意義を持つものといえます。