2016年6月10日、米大手銀行シティグループは商標登録侵害をしているとして米通信大手AT&Tを提訴した。シティグループが商標として登録している「THANKYOU」というワードを無断で使用したという。
(参照:知財高裁、タニタの体脂肪計「DualScan」の商標を無効と判決

この問題の背景には、2007年にシティグループが「THANKYOU」および「CITI THANKYOU」というワードをサービスマークとして米国特許商標庁(USPTO)に商標登録したことに端を発している。

最近になりAT&Tはシティグループとの提携のもとシティグループクレジットカード「AT&Tユニヴァーサルカード」を計画した。そのクレジットカードの中でAT&Tは「AT&T thanks」というサービスマークを使用していることが問題視された。

AT&Tは2016年4月にシティグループへの対抗措置として、この「AT&T thanks」を商標出願する。これに対してシティグループ側は商標権の侵害、出どころの虚偽記載、およびシティグループの権利を侵害した不当競争を理由にニューヨーク連邦裁判所への提訴に踏み切ったのだ。

通常、「THANKYOU」(ありがとうの意味)のような一般名詞を使ったサービスマークは、業種や使用用途が異なる場合は類似商標とは認められない。

今回のケースでは、AT&Tが通信業、シティグループが金融業と業種が異なるが、クレジットカードという用途において同じカテゴリーとみなされるかどうか注目となるだろう。

AT&Tが今回問題となっている「AT&T thanks」のサービスマークを使用することになった端緒が、今回のトラブルの相手方であるシティグループとの提携事業であるということが、今回の事例の大きな特色です。

ライバル企業同士がそれぞれ独立して類似商標を使用し、どちらが模倣したかということを巡って裁判になることはよくあります。しかし、今回、シティグループとAT&Tは、提携事業シティグループクレジットカード(「AT&Tユニヴァーサルカード」)に関して、商標トラブルを起こしてしまいました。

提携事業者同士であれば、お互いによく連絡を取り合えば、このような商標トラブルを回避することも容易なように考えられますが、今回は、裁判になってしまいました。このことで、提携事業は解消されるか、少なくとも、大きな停滞を招くことは間違いありません。

このような事態にならないようにするためには、商標の使用の際には、商標調査を十分に行い、後々のトラブルを未然に防ぐようにしておかなくてはなりません。