2018年4月13日、長崎県江戸町の町の紋章が特許庁の商標に登録された。

(参照:今度こそ商標登録へ「おおいた豊後牛 頂」

他者による商標登録により地元の自治会や商店街が紋章を使用できなくなる、という事態を予防するための保護的登録となっている。加えて、県庁が移転した後の町おこしにも役立つことが期待されている。商標権者は長崎県江戸町自治会だ。2017年7月31日に特許庁に出願し、2018年4月13日に登録された。

この紋章は、目の前に浮かぶ出島にオランダ商館があり、同町には長崎奉行所西役所が置かれていた寛政年間に考案され、オランダ商館長が江戸町に贈ったと言われている。江戸町のオランダ語表記である「Jedomati」のJとDの二文字を曲線で組み合わせてあり、全体のシルエットが海にすむタコに似ていることから「タコノマクラ」との別名で親しまれている。

出島表門橋架橋のために発掘作業をしている際に、この紋章が入った食器の一種であるれんげが見つかり、一般展示されたことから商標登録の運びとなった。

商標法では先願主義という考え方が採用されています。これは、商標権の対象となる商標を実際に使ったことがあるか否かに関わらず、特許庁に先に商標登録を出願して登録を受けた者がその商標を独占的に使用する権利を獲得するというものです。

「タコノマクラ」はその出現の経緯から考えると明らかに長崎県江戸町の自治会に使用権があると考えられますが、仮に、長崎県の出島にあったオランダ商館と全く関係のないものが「タコノマクラ」の商標の出願を行い登録が認められれば、本来の使用者であるべき長崎県江戸町自治会はこの商標を使えなくなります。

最も使用するに相応しい者ではなく先に出願して登録を受けた者が、商標を独占的に使用する権利を獲得するということが先願主義の難しいところですが、今回の件では、使用するに最もふさわしい団体が商標権を獲得したわけですから、この問題はクリアされていると言えます。