2021年3月11日、アパレルの三陽商会はファッションブランド「ポール・スチュアート」の国内商標権を取得した。今後は国内での意思決定を単独で行えるようになる。 (参照:愛知県のマスタード製造会社美ノ久が「フランスドッグ」を商標権取得

三陽商会は、オーセンティックなアメリカのファッションブランド「ポール・スチュアート」の取扱いを1990年に開始し、当初はブランドライセンスのみの契約だったが、2009年には直営店事業のライセンスも追加取得した。今回の商標権契約によりライセンス権者の米Paul Stuart,Incによる経営判断を仰がなくてもよくなる。

米Paul Stuart,Incは、日本の商社である三井物産が100%株式を持っており、今後は三陽商会と三井物産の連携により同ブランドが運営されていくことになった。

「Paul Stuart」は1937年に米ニューヨークのマディソンアベニューで創業した老舗のファッションブランドである。当初は紳士服を扱っていたが、その後婦人服にも進出し、ブリティッシュ系とアイビーリーグ系の雰囲気を持つテイストが特徴のブランドに成長した。

今回商標登録を行った三陽商会は、今まで米国Paul Stuart,Incとライセンス契約を結び、日本国内で「ポール・スチュアート」ブランドを使ってアパレル商品を販売していた企業です。一方、アパレルブランドである「ポール・スチュアート」の創業者である米国Paul Stuart,Incの株式の100%は日本企業である三井物産が保有しています。このように、「ポール・スチュアート」ブランドを巡り、日本企業と米国企業の権利関係が複雑に絡み合っています。

しかし、このことは、反対から言うと、このブランドの価値がそれだけ高いことを意味します。米国Paul Stuart,Incが日本企業の100%子会社となっているということは、当然、この米国企業が、過去に、単独では企業を維持できないほどの経営難に陥った事があることは間違いないでしょう。それを、このブランドの残すために日本企業が救済したということになります。

アメリカ生まれのブランドを日本の2つの企業が支えて存続させている、これは、このブランドでなければ絶対に買わないという一定の消費者が存在するからに他なりません。