2021年9月6日、特許庁は愛媛県松山市のお座敷芸から発祥した「野球拳おどり」を商標登録した。ブランド使用を保護し、今後も伝統を継承していきたい考えだ。 (参照:松山商工会議所「野球拳おどり」商標登録出願

商標権者は松山市と松山商工会議所となっている。2020年9月に商標出願され、今回の登録査証となった。意図しないブランド利用が、ブランディング低下につながることが懸念され、知財保護をするに至った。

「野球拳おどり」は、毎年夏に行われる「松山まつり」で野球のユニフォームを着て披露される踊りだ。大正時代に懇親会で行われた余興を発祥とし、お座敷芸として定着した「野球拳」をアレンジした踊りとなっている。

昭和45年の松山まつりに登場して以来、毎年県民によって披露されており、2021年もパンデミックの影響を受けてオンラインで開催された。「アウト、セーフ、ヨヨイノヨイ」という掛け声とともにじゃんけんをするのが特徴的だ。

踊りの名称が商標登録されるのは珍しいことだ。

「野球拳」というと、TVなどの影響で、誤ったイメージで理解されている傾向があります。しかし、本来は、愛媛県松山市発祥の郷土芸能であり、TVなどで宣伝しているイメージとは全く無関係のものであり、本当の「野球拳おどり」を踊っている人々にとっては、そういった誤ったイメージが世の中に流布していることは、大変迷惑なことに相違ありません。

一般的には、商標登録をする場合、指定商品・役務を指定して行います。今回商標登録された「野球拳おどり」は、コンピュータのゲームアプリ等を指定して登録されたものではないので、「野球拳おどり」が今回商標登録されたことで、「野球拳」の名前を使ったブランドイメージを壊すようなゲームソフトなどの販売に対して、法的な措置を取ることはできません。しかし、この登録で、多くの方々に、「野球拳おどり」の本当の姿が伝わっています。

今回の事例は、商標登録には、こういった誤ったブランドイメージを払拭する効果があることを示すものだと言えます。