2019年1月25日、特許庁は埼玉県の農産物「寄居とろとろナス」の商標登録を認めた。今回の商標登録により、今後のブランディング効果と販売促進が期待されている。 (参照:青森県深浦町 「ふかうら雪人参」が商標登録

商標権者は寄居町となっている。登録されたのは、「寄居とろとろナス」の文字、および緑色の細長いナスの図案である。「寄居とろとろナス」は埼玉県寄居町で自然交配してできた品種だ。加熱するととても軟らかく美味しいため、地元農家で「寄居町トロ茄子研究会」を発足。寄居町、埼玉県、JAふかやの協力のもと、生産・普及を進めている。

地元飲食店ではグラタンに採用して商品化しており、提供店舗を紹介するマップ作りも検討中だ。県立寄居城北高校の家庭科部に料理レシピの作成を依頼し、完成した。また、栽培技術の向上を図ると共に、販路拡大のため町の直売所などで試食販売会を開催したり、地元飲食店への食材提供を行なっている。

現在は「寄居町トロ茄子研究会」に参加する農家も増え、消費拡大と寄居ブランドの広がりが期待されている。

埼玉県寄居町の農林課では、「町民に(とろとろナス)の存在を知ってもらい、町外県外に発信して生産量も増やしたい」と話していますが、そうなってくると、地域の小さな集まりの中だけで知られる存在から、地域を超えて知られる存在として発展していく必要があります。その場合には、やはり、偽ブランド商品の流通が予測されますから、ブランドの保護策が必要になってきます。

今回の商標登録では、「寄居」という地名がブランドの中に入っていますから、地域団体商標でもよかったのではないかとも考えられますが、地域団体商標を出願できる者は、①特別の法律によって設立された法人格を有する組合②商工会③商工会議所④NPO法人等に限定されています。

今回「寄居とろとろナス」の商標の出願をした商標権者は、10戸の農家で構成される「寄居とろとろナス研究会」で、地域団体商標登録の出願権者には該当しません。従って、商標登録となったのかもしれませんが、今後、「寄居とろとろナス」の生産量が拡大していけば、研究会を法人化して、地域団体商標登録申請も視野に入ってくるかもしれません。

いずれにしても、知的財産権の保護制度は、地域産業の発展に不可欠の存在となっています。