2014年12月3日より、悪意の商標出願対策に関する日米欧、中国、韓国の政府当局間での国際会議が始まった。
(参照:特許庁、世界商標データベースに情報提供を開始

「悪意の商標出願」とは、地名やブランドなどの商標が他国の無関係な第三者によって勝手に商標出願されたり商標登録されてしまうことをいう。この国際会議は3日間の日程で行なわれ、最終日の12月5日には報告書が公表される見通しとなっている。

この悪意の商標出願が商標登録されてしまい、当事者である地方の特産品などを輸出しようとするときに支障が出るなど問題がすでに起きている。例えば「米沢」や「鹿児島」「今治」といった知名度のある地名が中国で無断出願された事例が起きており、製品販売に利用されてしまっている。

こうした状況が各国間での法整備のばらつきにあると指摘されている。日本の法制度においては、たとえ国内で知られていない商標でも外国で有名ならば第三者による不正登録を拒絶できる仕組みとなっている。しかし、中国などでは外国だけで知名度が高いケースには、第三者による商標登録が認可されることもあり、各国間で基準の違いを改善する必要があると認識されている。

例えば、日本の農産物を海外で販売しようとした場合、その販売先の国が、日本の産地名を、その国で、勝手に商標の登録をしていれば、日本の生産者は、その産地のブランドを使用できなくなるわけですから、大きな不利益を被ります。

特に、海外に輸出するような農産物は、産地ブランドによる付加価値を加えて販売する場合が多いですから、輸出先の国で、悪意の商標出願により、その産地ブランドを使用できなくされては、事業が成り立たなくなるおそれさえ発生します。

悪意の商標出願をした者の動機は、日本企業に自らが登録したブランドの使用権を高値で売りつけるため、日本企業が自国へ進出することを妨害するため、又は、単純に、日本発のブランドがもつ力を利用するため、など様々考えられます。しかし、動機はどうあれ、そういった行為が公正な国際間取引の障害になることは間違いありません。

このような悪意の商標出願が行われる最大の原因として、悪意の商標出願がなされる国の商標に関する法整備の不備があげられます。外国で知名度の高い標章でも、自国で知名度が高くない標章であれば、商標の登録を可能とするという制度では、悪意の商標出願の問題は解決しません。

この問題の解決には、自国で知名度が高くなくても、外国において知名度が高ければ、その国での商標の登録を困難にするような制度を、各国共通で採用する必要があります。