2014年11月25日、輪島市はかねてから申請していた商標「日本農業の聖地」が認定を受け登録されたと発表した。
(参照:商標登録する際に文字数の制限はありますか?

標準文字商標として認定され、米、食用粉類、菓子、パンなどと、技芸、知識などの教授、セミナーの開催、映画、音楽、教育研修などのための施設提供、写真の撮影などの分野で商標権利が認められる。

申請したのは2014年3月のことだ。輪島市は白米千枚田において伝統農法である「水苗代」を復活させる事業に取り組み始めた。これは棚田に種もみを直接まいて苗を育てるという米作り農法である。この活動を始めるにあたって地元の耕作支援グループ「白米千枚田愛耕会」の協力を求め、それをきっかけに商標出願を行なっていた。

世界農業遺産「能登の里山里海」を構成している輪島市は、海岸沿い崖地の棚田「白米千枚田(しらよねせんまいだ)」は国指定名勝ともなっており、千枚田で収穫された米が「日本農業の聖地」ブランドですでに出荷され始めている。

経済的な観点から言えば、千枚田で収穫されたコメは、生産コストが高すぎで、採算に合わず、千枚田は廃田にしたほうが合理的であるという結論になるかと思います。しかし、景観、伝統文化の継承、地域社会において果たす役割、雇用、観光など、様々な観点を総合的に考えると、千枚田は残しておきたいものの一つに数えられると思います。

こういった、経済的には採算が取れないが、その他の観点から廃止するのが望ましくない制度等は、公的機関からの補助金などにより存続させるのが一般的です。

しかし、それよりももっと理想的なのは、今回の輪島市の商標「日本農業の聖地」の登録のように、ブランドの力を上手に利用して、付加価値をつけた商品を販売し、補助金に依存しなくても、独立して、制度等を採算にのせ、長期的に維持できるようにすることです。

「千枚田」とは、知らない人はほとんどいないと思います。その知名度を利用してブランド化し、千枚田で収穫した米に付加価値をつけて販売する。こういった戦略により、千枚田を長期間にわたり独立して維持することができるようになることが期待されます。そして、この戦略の中心となるのが、「日本農業の聖地」の商標登録です。