福井県美浜町は、取得した地元食文化の商標の使用を許諾する契約を、東京の会社と結んだ。関係する商標は「美浜熟成魚」「塩熟ぶり」の二つである。 (参照:「美浜へしこ組合」が設立、若狭湾のへしこ販売強化へ

「美浜熟成魚」とは福井県美浜町で昔から伝わる食文化のひとつである。陸揚げした魚を寝かせ熟成させてから食べる方法をいう。「塩熟ぶり」は熟成魚の一種であり、特に美浜町日向地区で大漁を願う正月の神事に使う縁起物として伝えられてきた。脂ののったブリを塩になじませ、2週間ほど寒風にさらしながら熟成させて作る。

この二つの商標を使いたいと契約を結んだのが、東京の飲食店運営会社「ファンファンクション」である。3年前から都内の居酒屋で熟成魚を提供しており、評判を呼んでいる。そのため同社は美浜町に子会社を設立し、熟成魚の加工工場を完成させた。

美浜町とファンファンクションが商標使用の許諾契約を結ぶことで、「美浜熟成魚」「塩熟ぶり」ブランドを使用できることになり、居酒屋だけでなく小売販売も計画している。

商標登録を行うメリットとしては、商標権者以外の第三者が勝手に登録商標を使用した場合に法的な対抗措置を取ることができるということが第一に上げられます。しかし、それ以外にもライセンス契約を結んでライセンス料を獲得することを可能にするというメリットもあります。

今回、福井県美浜町と東京の飲食店運営会社と「美浜成熟魚」と「塩塾ぶり」のライセンス契約を結んだわけですけれども、それによって商標権者である美浜町にはライセンス収入が入ってきます。

一方、ライセンス契約の相手方である東京の飲食店運営会社「ファンファンクション」はそれまでは美浜町から「美浜成熟魚」と「塩塾ぶり」を仕入れて自分のお店(居酒屋)で提供することしかできなかったのが、契約締結後は自分で「美浜成熟魚」と「塩塾ぶり」の製造・販売ができるようになります。

今回の事例はブランド戦略の1つの好事例を提供しているといえます。