5月1日、静岡県周智郡の森町(もりまち)商工会は、「森の石松」の商標権を製菓会社である「田中製菓」(田中宏佳社長)から譲り受けることで合意した。「森の石松」は、森町出身で幕末に活躍したとされる侠客。その人気を全町を上げての町おこしに生かす構えだ。
(参照:商標登録からブランド化へ 静岡県の「割烹料理屋の万能」とは

「森の石松」は、清水次郎長の子分として活躍した人物とされており、浪花節や講談では愛嬌のある人物として描かれ人気が高い。実在の人物かどうかも含めて謎に包まれているが、森町の大洞院には石松のものとされる墓もあり、森町は石松の出身地とされている。

かつてこの地域の銘菓として「石松最中」があり、その商標は田中製菓の先代である和夫社長(故人)が60年ほど前に獲得していたが、石松最中そのものはほぼ姿を消していたという。

しかし、近年、町おこし団体「遠州木三の里連」が、田中製菓の許可を得た上で試験的に「石松最中」を販売するようになったところ、これが好評を集めたため商工会が商標権の譲渡を田中社長に申し入れ、今回の合意に至った。地元菓子店の叡智により「石松最中」に次ぐヒット商品が生まれることが期待される。

お菓子や日本酒の商標として、織田信長や坂本竜馬という歴史上の著名人の名称が登録されることはよくあり、静岡県森町出身の「石松」が、お菓子を指定商品として商標登録されていたということは、そう珍しいことではありません。

ですが、その商標とそれを付したお菓子(最中)がほとんど消えかけていたところ、地元の商工会が商標権者からその商標を譲り受け、かつ、お菓子(最中)を復活させて町おこしに活かすことになったということは、今の時代を象徴しているようで興味深いところです。

商標登録するということは、今回の件では、登録権者から譲渡を受けた森町商工会以外の者が勝手にお菓子(最中)を作って、それに「石松」と名付けて販売することを禁止し、商品の品質の不均等化によるブランド力の低下を防ぐことを可能にします。

今後は、消費者の信頼を損ねることなく、安心して本物の「石松最中」の販売ができるようになるわけです。

また、販売の増加が森町のアピールにつながっていくという側面もあります。