2020年2月27日から10月25日の期間、長野県岡谷市の岡谷蚕糸博物館で開催されている「運ぶ。蚕糸業を支えたモノの流れ」展において、「生糸商標」が展示された。さまざまなデザインの商標が目を楽しませてくれる。 (参照:長野県B級グルメ「駒ケ根ソースかつ丼」、地域団体商標として登録

戦前に養蚕業で栄えた岡谷市周辺には、多数の製糸工場が立ち並んでいた。昆虫のカイコから絹糸を生産し、世界にシルク糸を広く販売していたため、当時は同地区は「シルク岡谷」として有名だったという。

最盛期には岡谷市内だけで200社以上の製糸工場があり、それぞれが独自のブランドをもっていた。富士山や和服の女性姿などの日本を連想させる図柄に、アルファベットで記された商標が独特の雰囲気を醸し出している。

当時の商標を現在まで使用を続けている会社も現存する。当時同様に連綿と製糸業を営み続ける会社もあれば、業態を変えて別の商品を販売する会社もあるが、往年をほうふつとさせる商標デザインが興味を引く企画展となっている。

江戸時代末期、1859年の横浜開港と同時に輸出の主役となった生糸ですが、需要が高まったことによって品不足になり、それに乗じて粗悪品が出回るようになったため、明治政府は、高品質の生糸である証として専用の商標を付け、海外に生糸を輸出しました。これが、「生糸商標」の起源です。

高品質の生糸と粗悪品のそれを見分ける目をほとんど持たない海外の消費者にとっては、生産者を一目で分別できる生糸商標が付いていれば、安心して生糸を購入することができます。

輸出する側にしても、粗悪品が出回れば、日本産の生糸は粗悪品が多いなどと言う風評が立って、ブランドイメージが損なわれて、大きなダメージを受けるのですが、商標によって粗悪品の流通を抑えることができれば、そういった事態は回避できます。

「生糸商標」の歴史を考えることによって、商標の機能がよりはっきり理解できるようになります。